人それぞれだと思いますが、私にとっては「金木犀の香り」です。
70年代にかけて、トイレ用芳香剤で多く使われたことで、「トイレの香り」と言われることがあり、とてもガッカリです。
人の都合でマイナスのイメージを植えつけられてしまい、花に申し訳ないよう気がします。
本物の花の香りは、甘さのなかに、爽やかさを含んだ、すっきりとした香りです。
香りが強いため、どこからともなく秋風にのってきます。思わず深呼吸したくなります。
この花を白ワインに3年漬け込んで醸造した、桂花陳酒(けいかちんしゅ)は香りと甘さで女性に人気のカクテルです。
楊貴妃が好んだお酒と言われています。
白檀でできた宮殿に住み、丁子を口に含んでいたという逸話が残されていることからも、妃は香りの強いものがお好きだったのでしょう。
キンモクセイの花から抽出した精油も販売されています。
ただ海外の精油メーカーで見かけたことがないので、日本人向きに開発されたものかもしれません。
アブソリュート(溶剤抽出法)で、高価な精油のようですので、あまり一般の方にはお勧めでありません。香り自体はやはり本物の香りとは隔たりがあります。
これはどの精油にも言えることですが、精油は親油性のある成分が抽出されたものです。
水溶性の成分は抽出の過程で分けられてしまいますので、その植物の全ての、香りの要素を持っているわけでないのです。
そして、生きた植物の香りの成分は一日の中でも変化していきます。
植物の香りと精油の香りは必ずしも同じではないのです。
香りを手軽に楽しむためには精油を使ったアロマテラピーは最適な方法ですが、四季折々の花の香りは、生きた植物で楽しみたいものです。